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2014.10.10  あすなろ155 石鹸

2014.09号

牛乳石鹸という名前をご存じでしょうか。

その名も牛乳石鹸共進社という会社の作っている石鹸でして、明治四二年から続く商品ブランド「牛乳石鹸」を社名にしています。

商品名と会社名が同じという例は、昭和初期のころまでは数多くありました。しかし高度成長期からバブルにかけて、大手各社では経営を多角化したために、漢字の社名を片仮名のブランド名に変更したり、アルファベットを社名に入れることが流行しました。その結果、その後は一商品や一業界のみを表す社名が減っています。

例えば、鈴木自動車は株式会社スズキという名前になったことによって、不動産をしたり物置を作ったりしても「自動車会社なのに物置かよ」というつっこみを入れられないようにしています。出版一本から始まった福武書店は、教育関連がすっかり拡大したので、ベネッセという「かっちょええ名前」になりました。かつての石川島播磨重工は、今やアルファベット三文字のIHIが正式名称となっています。

もちろん、昔ながらの社名を守っている会社もあります。味の素株式会社は、商品名=社名の代表例ですね。他にも、浅田飴とか、仁丹とか、ブルドッソース、セメダインなどが、明治や大正から続く商品名を、現在もそのまま社名としています。今では作っていない商品名(シャープペンシル)を社名とし続けているシャープという会社もあります。

それはともかく、私は入浴時には、そんな牛乳石鹸を愛用しております。もちろん、わが家にも液体のボディーソープはあります。それでもあえて石鹸を使っている理由は、泡立ちが違うから、です。

あ、いやちょっと訂正。牛乳石鹸が特に泡立ちがいい、というわけではなくて、石鹸が一般的に、という意味です。風呂で使う限りでは、泡立ちや使用後のすっきり感は、どうも固形石鹸の方が液体石鹸に勝る気がします。

ただ、手洗いのような少量使用時には、違いは気になりません。むしろ、使い勝手の面から、液体石鹸の方がいいと思っています。

てなことを考えていくと、「じゃあ固形石鹸を溶かしてボトルに入れておけば最強じゃん」ということも思いつくかもしれませんが、そうなるとは限らないんですよね。実はほんのちょっとだけ、成分が違うのです。

※自由研究のネタってのは、本当はこうやって探すものですよー。来年あたり、誰か固形石鹸を溶かしてボトルに入れて、使いこごちを比べるなんて実験はいかが?または、液体石鹸を乾かしたら固形石鹸になるかどうか、なんてのとか。

その違いは自分で調べてもらうとして、その前に、まずは石鹸とはどういうものか、石鹸を使うとなぜ手がきれいになるのか、そもそもなぜ手の汚れは水だけでは落ちないのか、という話をします。

例えば、外で草むしりをして、手に土が付きます。そのまま水洗いをするだけでも、時間をかけてがんばれば汚れは落ちますが、石鹸を使った方が早く落ちます。なんででしょう?という話。

皮膚には毛穴があって、そこから毛が生えています。穴ですから、放置しておくと病原菌の入り口となってしまいますので、それを防ぐために中から皮脂という油を出して保護しています。この油は、毛穴の保護の他に毛髪表面の保護や、皮膚そのものの保護の役割もあります。

というわけで、人間の皮膚は、通常は油分で覆われています。ここに例えば土が付くと、皮膚の上は油に溶けた土がくっついているという状態になります。これを落とすためには、油を流し落とさなければいけません。しかし、水に油は溶けません。これが、水だけでは汚れが落ちにくい理由です。

一方、石鹸には、「油と水を混ぜる」作用があります。

石鹸の分子は細長い形をしているのですが、一方が「水に溶ける部分(親水基)」で、もう一方が「油に溶ける部分(疎水基)」となっているために、水と油を「つなぐ」ことができます。その性質から、石鹸分子は油を取り囲んで、油を水中に「溶かし出す」ことができるのです。


石鹸分子

石鹸分子.png


 石鹸が油を包む様子
 油を囲んだ状態をミセルという

  
ミセル.png

石鹸のような性質を持った物質を、「界面活性剤」といいます。なお、肝臓で作られる胆汁も同じ性質を持っていて、消化管内の脂肪を他の物質と混ぜる働きをしています。

このような石鹸分子は、脂肪酸(脂肪を消化したときにできるアレ)にちょっと手を加える(鹼化)だけでできあがります。実は、石鹸は油から作っているのです。

さて。今時は手洗い石鹸といえば、公衆の場所でも大抵が液体石鹸ですが、昔はよく固形の石鹸がそのまま置いてあったりしたものでした。(「シャボネット」は例外として)

そして大抵、長い間放置された石鹸は、表面には同じ方向に何本ものヒビが走っていて、しかもカチカチに固くなっていて、泡が立たないんですよねこれがまた。でもこの現象にも、ちゃんと理由がありました。

まず、同じ方向にヒビが入るのは、工程上の問題でした。機械練りという方法で石鹸を製造するとき、棒状に押し出すために、結晶の向きが揃ってしまうからだそうです。枠練りという方法で作られた石鹸では、これは起こらないとのことです。

また、石鹸は様々な温度に対応できるように、低温から水に溶けやすい柔らかい成分と、高温で洗浄力を発揮する硬い成分が混ぜてあるのだそうです。ところが、湿度の多い所に放置しておくと、水に溶けやすい成分だけが流れ出てしまって、硬い成分だけ残った石鹸になってしまうのだそうです。

ということは、硬くなってしまった石鹸は、お湯で使えばよかったのですね。三〇年前の自分に教えてあげたいです。

また当時は、屋外の水道に、ネットに入れた石鹸をかけておくと、よく無くなったものです。昔の学校の先生とかは、誰が盗っていくのか結構悩んだらしいのですが、この犯人は、今ではカラスだとわかっています。カラスが石鹸を食っちゃうんですね。先に述べたとおり、石鹸というものは脂肪をちょっといじっただけのものですから。

最後は、最近の若者には縁の無い話でした。

学塾ヴィッセンブルク 朝倉  



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