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2014.10.11  あすなろ95 血液型人間学?(過去記事)

2009.09号

以前からこれを読んでいる方は十分ご承知だと思いますが、私は「科学の人」です。科学的に正しいと証明されていないことは信用しません。定期的に現れては消えるエセ科学~マイナスイオンだの、アミノ酸ダイエットだの、トルマリンだの~のブームは、私にとっては嘲笑(ちょうしょう)の対象でしかありませんでした。わかっていたならともかく、本気で騙(だま)されて無駄なお金を使ってしまった人は、本当にご苦労様です。

さて、これらと同様に、もう何十年も前から、学術的に全く意味がないと否定されているのに、未だにすごい数の人が騙されているものがあります。それが「血液型人間学」というものです。

バブル真っ盛りの八十年代後半、この血液型の一大ブームが起こったことがありました。そんな中の1986年、富山大学の学生が、卒業論文のテーマにこれを取り上げたことがあります。こんな感じです。

血液型と関連があると思われる性格について、六十項目の質問を作成しました。それに対して、「はい」と「いいえ」で答えさせる調査を136人に対して行いました。この「人間学」が正しいのなら、例えばO型の人の性格に合う質問なら、O型の人に「はい」が明確に多く、それ以外の人には「いいえ」が明確に多いはずです。その違いが、測定誤差なのか有意な差(=意味のある差)かを見極めるために、統計学的に検定しました。

その結果、六十個の質問の中で、有意な差が見られた回答は、たった三個だけでした。しかもその三つは、血液型人間学によればO型に「はい」が多くなるはずの質問にAB型の「はい」が明らかに多くなってしまった項目、B型が多くなるはずがAB型が多い項目、B型が多くなるはずがO型が多い項目の三つだったそうです。つまり、六十個も用意した「血液型別特徴」は、何一つ正しいものはないと、統計学的に否定されてしまったのでした。

別の調査もあります。

八十年代に血液型ブームを巻き起こして大儲けをした能見正比古が亡き後、今は息子の能見俊賢が後を継いで布教活動に努めています。その息子の著作では、各血液型の中にも四つのタイプがあるということになっているので、それに対応させた調査も行われました。つまり、今回は血液型四種×四タイプの、十六個の質問を用意して、自分に合うかどうかでまた「はい」と「いいえ」を聞いたわけです。この調査では、大学生337名を対象に行われました。

結果、有意な差が現れたのは一項目のみでした。そしてその項目も、AB型の性格のはずがO型となり、やはり「何一つ正しくない」という結果に終わりました。

もっと大規模な調査結果もあります。

TBS系全国28社テレビ局が、サンプルを無作為抽出して行っている意識調査に、血液型と関連があると言われる性格の質問項目を入れて、80年、82年、86年、88年の四回にわたり、総計12418名の調査を実施しています。その結果を統計学的に検定したところ、全二十四項目の中で、毎回有意な差が出たとされる質問は一つだけでした。しかしそれも、毎年同じ血液型に支持されたわけではありませんでした。これはB型が多くなるはずの質問だったのですが、80年ではB型、82年はO型、86年ではB型、88年ではAB型に、多く支持されています。

結果に一貫性がないので、やはり血液型と性格との関連性は証明できていません。

血液型は、二十世紀の始めに発見されました。その新しい可能性に対して、日本の医師達が性格との関係を探ろうと模索する中、論文として最初に著(あらわ)されたのが1927年のことでした。しかしその根拠は、各職業や行動に対して、二十一名の調査、十二名の調査、十八名の調査、など、実におそまつなものでした。

この学説は、1933年の日本法医学会総会にて、正式に否定されます。バブルの頃に流行した「血液型人間学」は、能見正比古がこれを掘り起こして、脚色しただけのものでした。現在のものも、基本的には昔のこれと変わっていません。

いいですか?こんなものは今から七十年も前に、すでに「それはねえよ」という結論が出ているんです。戦前の話ですよ。

ただ、一応フォローをいれますと、この手の本は確かに、うま~く騙せるような書き方をしてあります。これは、占いでもよく使われる「テクニック」なのですが、どんな人が聞いても「自分に合っている」と思わせるようなことを言えばいいのです。

例えば、今日の占いをしてあげましょうか。

今日は、人間関係に注意。自分勝手な行動を取ると、まわりとトラブルになるから注意してね

......自分勝手な行動をとると、まわりとトラブルになるのは当たり前です。よくある「今日の占い」なんてものの正体は、だいたいこんなレベルです。

では、こんな文章はどうでしょう?

あなたは人に好かれ、尊敬されたいという強い欲求があります。

自分の将来には希望を持っていますが、願望の中には非現実的なものもあります。しかし、まだ使われていない潜在能力がたくさんあります。

社会の秩序やルールを尊重し、それを守るために自制することができます。しかし、制限や禁止事項が多いと、面白くないと感じます。

内面の性格には弱いところもあり、時には自分の行動が正しかったのか、不安に陥ることもあります。しかし、一般的にはそれを克服する能力はあります。

放浪癖はありませんが、一度は行ってみたいと思っている場所が複数あります。

当たっているでしょ?だって誰だって当たるように書きましたからね。

そしてこの冒頭を、「◆型の人は~」と書き換えて、内容を四つくらいに適当に振り分ければ、血液型人間学の完成です。読む人は信じ切っていますから、自分に多少合わなかったときにも、自分なりに勝手に修正してくれるので便利なものです。

今では、外れたときの逃げ道も用意されています。「性格チェック」から自分の「血液型度」を出したとき、実際の血液型と合えば「キミは素直」、合わなければ「自分を意外に知らないのかも」だそうですよ。そんなどうにでもなるような書き方を読んだら、普通はそれでも信じる人なんてい......るんだろうなあ、やっぱり。

学塾ヴィッセンブルク 朝倉  

参考文献『「心理テスト」はウソでした。』村上宣寛



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