茨城県下妻市の学塾ヴィッセンブルクは少人数制で質の高い授業で上を目指す学習塾です。

コース紹介

トップページ

学塾ヴィッセンブルクについて

外観写真

住所
〒304-0067
茨城県下妻市下妻乙1277-6
電話・FAX
0296-43-2615
アクセス

お問い合わせ

  • 生徒募集中!!

2014.11.03  あすなろ156 「とう」と「とお」の違い

2014.10号

「小人閑居して不善を為す」という言葉があります。
小人(しょうじん)とは、つまらない人間という意味です。
閑居はヒマでいること、不善は善の反対ですね。
つまり、

「つまらない人間は、ヒマを持てあますと碌(ろく)なことをしない」

という意味です。

要するに私がそれなんですけど、ヒマになると碌でもないことばかり考えています。
今回は、そんな脳内で考えた事の紹介です。

「通り」という言葉があります。
ひらがなで書くと「とおり」です。
「とうり」ではありません。
他にも、「遠い」は「とおい」です。
しかし、「冬至」は「とうじ」です。

何が違うんでしょ。
何でしょうね。

経験的に、「オ段」を伸ばすときに「オ」と表記する言葉は、
「ウ」と表記する言葉に比べて少数派だろうということはわかります。
では、その少数派の「オ」表記の言葉を集めてみましょう。

 とおり(通り)
 とおる(通る)
 とおい(遠い)
 こおり(氷)
 こおる(凍る)
 おおきい(大きい)
 おおい(多い)
 おおう(覆う)

発見しました。
これ、みんな和語ですね。
和語とは、漢字が伝わる前から日本にあったと思われる言葉です。
もう少し違う言い方をすると、訓読みの言葉が和語です。

つまり、日本語の本来の発音は「トオ」なんですよ。
それが、漢字が大陸から入ってきた時に、
「冬という文字の読み方はトウである」
と伝えられたのでしょう。

というとは、最初のうちは、きっと「冬至」も「トージ」や「トオジ」とは読まずに、
「ト・ウ・ジ」と、「ウ」をはっきり発音していた可能性があります。
可能性があるというよりも、実際にウと発音していたでしょうね。

というのも、ひらがなは漢字から作られたものですので、
当然ながら漢字よりも後から使われ始めています。
「とおい」とひらがなで表記している頃には、
「冬=トウ」という言葉は日本にもうあったはずですから。

そもそもひらがなは、日本語の発音に合わせて書く文字として登場しています。
それなのに「トウはトオと読みましょう」なんてルールを作るわけが無いですよね。
中1の頃、英単語の上に書いた読み仮名と同じだと思ってくだされば。

ともかく、その後時代を経るに従って、この二つの読み方は収斂していって、
共に「トオ」と同じ発音になってしまったのでしょう。
というわけで、和語はみんな、オ段の伸ばす音を「オ」と書くのでしたー。
はい、無事解決ですねー。

 ほうる(放る)
 もうす(申す)

あれ?
いや、あれ?
え?

「放る」はともかく、「申す」が漢語ってわけがないですし、音読みでもありません。

もしかして、昔は「もおす」と書いていたとか?
古語辞典を引いてみましょう。

 「もおす」→なし

 「まうす(申す)」

あっ......アホだ俺。
そういやそうですよねー。
「申す」は昔は「まうす」だったんです。
当然読み方も「マウス」だったことでしょう。
それが今、「モース」という発音になってしまっているので、
それに合わせて書き直されているだけなんですね。

ついでに、「とおり」なども古語辞典で確認しておきましょうか。

 とほり(通り)
 とほる(通る)
 とほし(遠し)
 こほり(氷)
 こほる(凍る)
 おほき(大き)
 おほし(多し) 
 おほふ(覆ふ)

あ~~~~。
そっかー。
前言撤回。

日本語本来の発音では、通りは「トオリ」ではなくて「トホリ」だったんですね。
つまり、現代語で長音の時に「オ」と書くものは、昔はみんな「ホ」だったと。
ホと発音していた言葉が、時代を下るに従ってオに変化していったと。
そうだったのですか。

今回のように、古典ではハ行で使われていた言葉が、
現代語ではア行に入れ替わって使われる例はたくさんあります。
例えば、会うは昔は「あふ」でしたし、臭うは「にほふ」、食うは「くふ」、
舞うは「まふ」......。

待てよ。

まさか、現代語で「う」で終わる動詞は、全部「ふ」だったとか......?

古語辞典巻末の活用表を見てみました。
四段活用の表に、「ア行」はありません。

もう何年も動詞の活用表を見ているのに、これまで全く気づいていませんでしたわ。

活用とは、動詞・形容詞・形容動詞の語尾が、使われ方によって形を変えることです。
その変わり方をまとめて表にしたものが活用表というものです。

活用の仕方は、現代語と古語では少々違いがあります。
例えば、先ほどの「会ふ」は、

156-1.png

と、語尾が「アイウエ」の四段に変化しますので、四段活用と言われています。
これの場合は、「ハヒフヘ」と変化していますので、ハ行四段活用と呼ばれています。

それに対して、現代語の「会う」は、

156-2.png

あ、ちょと待った。

先ほど、古典のハ行がア行になったとしましたが、違いますね。
ハ行はワ行になっていますね。
やはりこちらも、発音がそう変化していったのでしょう。
先ほど挙げた「会う」「臭う」「食う」「舞う」は全て、ワ行五段活用ですから。
考えてみれば、格助詞の「は」を「ワ」と発音するのも、きっと同じ流れなのでしょう。

156-3.png

ということは、まさか現代語でもア行五段活用は無い、とか?

 「行け! 国語辞典!」
 「ピカー!」

ありませんでした......。

さらに眺めてみると、ア行で上一段・下一段活用する動詞は、
そのほとんどが古典ではア行ではなかったようですね。
例えば、「悔いる」は古典では「くひる」ですし、「越える」は「こへる」、
「居る」は「ゐる」です。

例外は、「射る」が古典でも「いる」なのと、
「得る」が古典で「う」であることくらいしか見つかりません。
しかし、そのうちの「射る」はヤ行だったのではないかという説もあるようですので、
「う」→「得る」が、ア行で活用するほぼ唯一の例外でしょう。

さて、ここまで放置していた「放る」の正体です。
放り投げる、放り出すなどと色々なバリエーションを持つ「放る」ですが、
なんと、「ホウ」は音読みでした。
ですから、「放る」という使い方は、文化庁の常用漢字表に無い読み方、
いわゆる表外音訓だったのです。

もちろん、こんなことはテストに出ません。

学塾ヴィッセンブルク 朝倉  


一覧に戻る

ページの先頭へ