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2014.12.05  あすなろ87 落葉のシステム(過去記事)

2009.01号

まずはお詫びと訂正から。

前回(あすなろ86

「赤ん坊がぶら下がれるわけねえだろ。親父も老いたな(笑)」

と書いたところ、生徒から、

「ウチのばあちゃんが昔、ぶら下げたらしいっす。ばあちゃんマジパネエっす」

という、貴重なご意見をいただきました。

科学信奉主義者の私としましては、伝聞とはいえ、実験データを何よりも重視致します。
つきましては、「赤子はぶら下がることができる」と訂正致します。
根拠となるデータを持たないまま仮説を見苦しく振りかざして、大変申し訳ありませんでした。

わが家の山茶花(さざんか)が、今年の花の盛りを過ぎました。
買ってきて植えたのが八年前、最初のうちは心許ない開花数だったのですが、
ここのところようやく「満開」がわかるような咲き方をするようになってきました。
そう思いながら眺めていて、ふと気づいたことがあります。

「落ち葉焚き」という童謡があります。
「垣根の垣根の曲がり角」というあの曲、季節はいつだと思いますか?
思っていましたか?

一番の最後に「北風ピープー」とあるので、
私はすっかり真冬の曲だと思いこんでいたのですが、
二番に「山茶花山茶花咲いた道」とあります。

先に述べた通り、少なくともわが家では、山茶花は年末までには無くなってしまいそうです。
ということは、山茶花の季節=晩秋から初冬ということになりますので、
この曲も真冬の曲ではない、ということなんですね。

確かによくよく考えてみれば、本当に真冬になっちゃったら、
もう落ち葉焚きなんかしませんわな。
葉が落ちてこないんですから。

小学校でこの曲を習って以来二十余年経って、ようやく真意を理解しました。
ウチのカミサンも、同じく真冬だと思っていたようです。
小学生の頃の思い込みというものは、随分とあとまで続くもののようです。

今年もまたこうして、葉を落とした木々が増えてきたわけですが、
その一方で、季節による落葉をしない樹木もあります。
前者は落葉樹、後者は常緑樹と呼ばれていますが、
今回はこの違いを考えてみようと思います。

まずは、冬に落葉する理由から。

葉というのはそもそも、光を受ける器官です。
少しでも光を受けられるよう、表面積を可能な限り広くとっています。
またその表面に無数の気孔を配することにで、二酸化炭素をたくさん取り入れ、
酸素や水蒸気をたくさん放出できるようになっています。

しかし光合成は、気温が下がると効率が下がります。
それでも細々と光合成をすることは可能ですが、
酸素や二酸化炭素をガス交換しようと気孔を開くと、外は空気が乾燥しています。
この先は、ハイリスクな乾燥との戦いになってしまうのです。

さらに厳冬期になると、今度は導管が凍結する恐れがでてきます。
溶けかかった状態の氷を流そうとすると、こんどは気泡ができてしまいます。
すると、葉から根に通じる水のつながりが途切れてしまいます。
要するに、水の流れが悪くなり、水切れが起こるのです。

落葉樹がここで選択した道は、
「それならばいっそ、冬は光合成をやめてしまおう」
というものでした。

光合成をやめるのなら、葉を保持している必要はありません。
むしろ、葉の表面積が無くなる分だけ、乾燥に強くなります。
導管内の水が凍結しても、完全に解凍してから動かす分には気泡はできません。

そこで、冬期は葉を捨てて、活動停止することにした、というわけです。
(植物の生育地域によっては、乾期に落葉して雨期に葉を出す樹木もあります)

しかしこの選択は、余計なコストを必要とします。
何せ、せっかく作った葉を使い捨ててしまうわけですから、本当はもったいないのです。
ですから落葉樹は、最初からあまり丈夫な葉を作りません

さらに秋になると、葉にあってまだ使えそうなものは、体内にどんどん引き上げ始めます。
溜まった栄養はもちろん、葉緑体だって一旦ばらして回収します。
春になったら、組み直して再利用するのです。

このように緑の部品を回収していくと、葉から緑色が失われていきます。
代わりに、それまで緑の強さに隠れて見えていなかった
赤や黄色が見えてくることがあります。
これが紅葉です。
紅葉の色づきに関しては、もう少し別の要素もあるのですが、今回は割愛します。

また、春になって芽吹く際には、栄養補充(=光合成)のない状態で、
葉を作っていかなければなりません。
そのために、秋までに幹や根に栄養を貯めておくことになります。
栄養を貯め込んで休眠するというところは、動物の冬眠と同じなんですね。
実は。

樹木に限らず、多年草も同じような方向性の「冬眠」をすることがあります。
こちらの場合は、地上部分を全て枯れさせてしまって、
根っこに栄養を貯め込んで冬越しします。

一方、熱帯などの環境の変化が少ない地域では、基本的に常緑樹です。
常緑樹では葉を使い捨てる必要がないため、丈夫で長持ちする葉を作ります。
特に、少々寒くなる地域に対応した植物は、葉に厚みを持たせ、
表面をツルツルに堅く仕上げて、乾燥に耐えるようにしてあります。
最初にあげた山茶花は、この典型的な例と言えるでしょう。

というわけで寒い地方に行けば行くほど落葉樹......とはならないんですねえ。

実はこれまでの話は、広葉樹=双子葉類=「葉っぱの平らな植物」の話でした。
マツやスギなどの針葉樹では、話が違ってきます。

針葉樹は、植物としては原始的な部類(裸子植物)に入ります。
スギを見れば分かるとおり、葉の面積はあまり多くありません。
また、幹の中で水を通す通路は仮導管(かどうかん)と呼ばれるもので、
要するに細いのです。
つまり、光合成の効率があまりよくありません。
光合成に関しては、広葉樹と競争したら確実に負けます。

しかし、葉の面積が少ないということは乾燥に強く、
仮導管が導管よりも細いということは凍結に強く、
つまりは寒冷地でも耐えられる性格を持っていることになります。
もう少し言えば、寒冷地では広葉樹との競争に勝てるわけです。
ですから、あえてこの古いシステムのままで、その先に進化しなかったのでしょう。

さらに寒冷地に行けば、もっと原始的な植物(地衣類)しか棲息していません。
生物は、進化する必要がなければ、無駄に進化しないものなのです。

ですから、今から二万年後の地球も、案外同じような生き物ばっかりかもしれませんね、
ドゥーガル=ディクソンさん。

学塾ヴィッセンブルク 朝倉  


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