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2016.04.24  あすなろ174 重力波

2016.04号

今年1月、「重力波の観測に成功した」という話題がありました。

いやー。すごいですねー。
だって重力波ですよ重力波。
え? 知らない? 
重力波っていったらアレですよアレ。
あのほら、あるじゃないですか。
あの、......おおお前だって知らないくせに!

いや、わかるにはわかるんですけど、これってどこからどう説明しましょうか。

重力波というのは、文字通り重力の波です。

波といっても色々とあります。
例えば電波や光は、何らかの粒(という書き方でご勘弁)が
波を描きながら飛んでくるというものですが、
水面に起こる波紋や地震を伝える波は、
周囲に満ちた水や地面そのものが波打ちます。
空気などを波打たせる音も同様です。

電波や光は、真空中でも伝わります。
粒が飛んでくるわけですから。
しかし波紋や地震は、物から物へと伝わりますので、
物が詰まっている所以外では伝わりません。
音が真空中を伝わらないのはご存じかと思います。

重力波は、粒が飛ぶものではありませんので、
どちらかといえば後者に近い性質の物です。
しかしこちらは、真空中でも伝わります。
何故かというと、重力波によって波打つのは、

空間そのもの

なのですから。

アインシュタインの相対性理論によれば、
空間は重力や時間によってゆがむとされています。
例えば、光はどこまでも真っ直ぐに進むものですが、
実は重力の大きい天体の近くを通過するときには、
重力に引かれて曲がって進んでいます。
これは何故かというと、その周辺は重力によって空間がゆがんでいるから、
という考え方をします。
(重力レンズ効果と言われ、アインシュタインの説が正しいことを示す証拠の一つです)

また、重力によって空間がゆがむ概念は、よく「ゴム膜上のボール」に例えられます。

174-1.png
174-2.png

イラストのように、その「ゴム膜上のへこみ」によって、
近くに並べた二つのボールは、互いに引き合います。
その二つが同じ重さならば共に近づきますし、
重さが違う場合はゴム膜のへこみ方も違うため、
重いボールの深いへこみに、軽いボールが引き寄せられて転がり込んでいきます。

これが「万有引力」の正体です。
いわゆる引力は、空間のゆがみによって起こる現象なのです。

空間(時空)は、質量が大きければ大きいほどゆがみます。
そして空間を大きくゆがませるほどの物体が動くと、
そのゆがみは波となって周囲に伝わります。

これが重力波です。

174-3.png

今回は、ブラックホール連星の衝突による重力波が観測されました。
ここでは、太陽の36倍の質量のブラックホールと太陽の29倍の質量のブラックホールが
衝突したのですが、できあがったブラックホールは太陽の65倍に減少していました。
つまり、太陽の3倍分の質量は、エネルギーとなって放出されてしまったのです。

質量というのは重さのことですが、計算上、質量はエネルギーに変換できます。
(→あすなろ190
ものの本によると、
「1グラムの物質でも都市を丸ごと吹き飛ばすほとのエネルギーを持つ」
のだそうです。
なお、太陽の質量の3倍は、地球の質量の100万倍に相当します。
それだけの質量がエネルギーに変わったのです。

そんなエネルギーが、およそ13億光年先から光速で地球に伝わってきました。

その結果! 
なんと太陽と地球の距離が、水素原子1つ分の幅のゆがみを起こしたのです。
すげーぞ重力波!

......もうわけわかんないです。
誰か助けて。

とまあ、そんなレベルのゆがみですので、
これまでは観測が実現されていなかったというわけです。

今回の観測成功は、アメリカの観測装置によるものでした。
改良版の観測装置が完成して、試運転を始めてからたった2日後に観測されたのです。
しかも、本命ではない天体で。
予想外に簡単に測定できてしまったことから、
今後は、もっと沢山のデータが取れる可能性が高いと、期待されています。

同様の測定装置は、日本でも試運転中です。
イタリアでも改良工事の最中です。
この3つの装置のデータを統合することで、より正確なデータが得られるようになる予定です。
さらに、「重力波天文学」という、新たな学問が開かれるとも言われています。

さて、重力波の存在をアインシュタインが予言したのは、
ちょうど100年前のことでした。
科学者達は、アインシュタインの「宿題」を、100年かかって解いたことになります。

こんなものが何の役に立つのか、という問いもあるでしょう。
ところが、アインシュタインの相対性理論は、
現在ではGPSの精度を保つために不可欠な理論なのです。

人工衛星は速度が非常に高く、重力が少ない場にあります。
そのため、地上とは時間の流れる速度が変わるので、時計が狂います。
それを補正する計算が、相対性理論なのです。
そんな相対性理論が正しいという証拠が、また一つ見つかった、というのが、
今回の観測なのでした。
我々の生活と全く無縁なものというわけでもないのです。

学塾ヴィッセンブルク 朝倉  


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