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2017.03.07  あすなろ184 酉のおはなし

2017.02号

年が明けて、酉年となりました。

正確には、今年の干支(えと)は丁酉です。「ひのととり」と読みます。

十干(じっかん)というものがあります。きのえ、きのと、ひのえ......と続くのですが、これは五行思想というものから来ています。

五行や十干の話は以前にも書いたことがあるのでやめようか省略しようと思ったのですが、見返してみたら2006年1月のことで、もう十一年前の話でした。ですから、話題が少々重複(ちょうふく)しちゃいますが、また書きます。ご容赦くださいませ。

五行というのは、「世界は五つの元素からできている」という古代の中華思想で、それは「木」「火」「土」「金」「水」の五つです。まとめて「もっかどこんすい」と読みます。

お気づきかもしれませんが、肉眼で見える五つの惑星の名前は、ここから来ています。そしてこれに太陽(日)と月を合わせたのが七つの曜日です。

この思想に、陰陽道(おんみょうどう)という「この世には全て光(陽)と影(陰)がある」という思想が加わって、五行をそれぞれ二つに分けることにしました。陰・陽の代わりに兄(え)と弟(と)という名前で分けた結果、「木の兄=きのえ」「木の弟=きのと」「火の兄=ひのえ」......と順に名付けられたのが十干です。

そんな十干に、上から順に甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の文字を当てはめます。すると、上から四番目の「丁」が「火の弟」となり、「丁=ひのと」と読むわけです。


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さらに、この十干に、ご存じ十二支を組み合わせたのが「干」「支」で干支なのです。今年の「十二支」は確かに酉ですが、「干支」は?と問われたならば、本当は「ひのととり」と答えるのが正解となります。干支と聞くと、つい十二支のような気がしてしまうのですが、厳密には違うのです。

警察や役所などが年齢確認をするとき、正しい年齢か確かめるために干支を質問するというフォーマットがあります。しかしそんな時に、「十二支ならわかるのですが、干支はちょっと......。そういうあなたは、ご自分の干支はご存じなんですか?」「俺はひつじだけど」「それは干支じゃないですよね。私が聞いているのは干支なんですけど」なんてことを言ってみたいのですが、なかなかそんな機会がありませんでした。しかし、未成年が警察に捕まった場合ならば、そういう機会もあるかもしれません。というわけで未成年の方は、是非お試しください。もちろん、警察に捕まるところからスタートです。

ところで、先にも書いたとおり、兄が「え」、弟が「と」です。合わせると「えと」です。このことは、最近小学生に指摘されて初めて気付いたのですが、やっぱこれが「えと」の語源なのかなー、と思って語源辞典を調べると、やはりそれで正解となっていました。

さらに語源辞典によると、漢字の干支(かんし)は、元々は干=幹、支=枝のことで、幹枝が後に干支と表記されるようになったのだそうです。確かに、「幹枝」の漢字の一部を抜き出したのが「干支」です。

その干支の、幹の方がこれまでに書いた通りの十干で、枝の方が十二支です。漢字で書くと、子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥となるわけです。

そしてこの10番目が酉となるわけですが、酉が「とり」であることに、実は深い理由はありません。いや、酉に限らず十二支のは、単に民衆が覚えやすいように身近な動物を当てはめていっただけ、という話です。

研究者によっては、この十干の甲乙丙丁戊己庚辛壬癸と十二支の子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥は、共に植物(作物)の一生を表しているという主張もあるようです。

いずれにせよ、漢字本来の意味としては、「酉」に「にわとり」という意味は全くありません。「酉」とは、語源的には酒のことです。古代の甲骨文字でも、「酒を入れるつぼ」を表していました。


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また、部首としては、酒に関する意味を持つ漢字に使われています。

部首名は何種類かあるようですが、大抵は「ひよみのとり」と呼ばれています。「ひよみのとり」の「ひよみ」とは「日読み」であって、カレンダーのことです。要するに、「十二支で使われているトリ」という意味ですね。単なる「とり」だと「鳥」という部首になってしまうので、それと区別するためにこういう名前になったのだとか。

なんだかぞんざいな命名ですが、部首の名前って、そんなのが結構あります。

例えば、「うかんむり」は「宇」のかんむりだから、という理屈がわかりますが、「わかんむり」は片仮名のワの形だから、という適当さです。ちなみに、片仮名も平仮名も「う」は「宇」から作られましたが、「わ」は「和」から作られています。わかんむりと「ワ」は由来的に全く関係ありません。

「こざとへん」もひどいです。「部」などのつくりである「おおざと」は、その名の通り里を表す「邑」から来ています。しかし、「陸」などのへんである「こざとへん」は、元々は「阜」という字で、丘のことです。しかし「おおざとに似ているから」というだけの理由で「こざと」にされてしまっています。

まあそれはともかく、ひよみのとりがついた漢字は酒がらみです。をしたりったり酩酊(めいてい)したりめたりするわけですね。酒を造る時も、(かも)したり発醗酵)させたりするのですが、酒造りに失敗するとっぱいができてしまったりするわけです。油も発酵食品ですね。また、醍醐(だいご)という食べ物があったという記録があるのですが、これはヨーグルトかチーズのことではないかと言われています。こちらもやはり発酵食品です。

さて、そんな酉年ですが、今年が酉年なのは実は日本だけではありません。この中国から広まった風習は、東アジア一帯はもちろん、西アジア・東ヨーロッパ・ロシアにまで親しまれています。ただし、国によるアレンジは多少ありまして、例えばインドでは鶏の代わりに神鳥ガルーダとなるのだそうです。

ガルーダ年かあ。いいですねえ。もうちょっと早く知っていれば年賀状に書いたのに。

学塾ヴィッセンブルク 朝倉  



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