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あすなろ127 君が代(過去記事再掲)

2018年3月4日投稿

 

 

 

2012.05号

 

我が家では、朝日新聞と産経新聞を購読しています。

 

ご存じの方はご存じでしょうが、大手全国紙では、朝日が一番のリベラル=左派で、産経が一番の保守=右派です。

要するに、一つのことに対する評価が正反対のことも珍しくなく、読み比べると、とても楽しいのです。

 

各読者層も、それぞれがそんな新聞のスタンスに応じた人たちとなっているようで、読者投稿の内容もまったく傾向が違うことがあって、非常に楽しめます。

 

最近では、大阪が教職員に「国歌斉唱をちゃんと歌えよ」なルールを作ったことに対して、産経は「歌うのは当然だろ」、朝日は「別に無理に歌わなくたっていいだろ」と唱えていて、読者投稿の欄も、それぞれの新聞社に同調する意見が並んでいます。

 

そんな中で、読んでいてリアルに吹き出しちゃった投稿がありましたので、紹介します。

 

2012/4/4朝日新聞朝刊14版より。

兵庫県明石市の高校教員、五六歳の女性からの投稿を紹介します。

 


卒業式に合わせるかのように、大阪市で「君が代」斉唱義務つけの条例が成立して心が痛んでいたとき、ふと生徒たちのこんな会話を耳にした。

 

「なんで歌わへんの?」

「知らん」

「君って、おまえのことなんだろ?」

 

今の子供たちのほとんどが君が代の意味を知らない。

歌の意味も十分分からず、その起立斉唱を拒否する意味もよく分からないのではないだろうか。

 

式で、歌えと言われたら何の疑問もなく歌っているのだろう。

その姿は、「お国のために」と叫んで戦った兵士たちの姿に重なってくる。


 

「重なってくる」にフイタわ。

 

重ならねえよ普通は。

どんだけ想像力が豊かなんでしょうかこの人って。

 


私は焦りを感じ、生徒たちに「君が代」の歌詞を板書し、その意味を説明した。

どれほどの生徒の心に響いたのかはわからないが、多くの生徒は初めて聞く歌の意味に耳を傾けていた。

そして、それが戦争へとつながる、ということが初めて理解できたようである。


 

マテマテマテマテ。

いや、俺意味知ってるけど、そんなこと理解できねえよ。

 

なあお前......高校生の頃、古典できなかっただろ......。

まさか国語教師じゃないよな。

 

どこで間違えちゃったのかわかりませんが、仮にも高校教師やってて、しかも五六歳にもなってこんな人もいるんですね。

 

そして最後は、

 


「君が代」を義務づけたり、意味も教えずに歌わせたりするのは、戦前の軍国教育につながるものがあるように思えるのだ。

 

私も起立はするものの斉唱したことはない。


 

と結んでいるのですが、この最後の一文って「私は職務を全うしていません」宣言ですよね。

全国紙に実名入りでこんなこと載せて貰っちゃって大丈夫なんでしょうか。

人ごとながらちょっと心配です。

 

というわけで、前置きが長くなりましたが、こういう変な人にウソを教えこまれてしまわないように、君が代の正しい意味を知っておくことにしましょうか。

 

 

君が代は 千代に八千代に さざれ石の

 

巌(いわお)となりて 苔(こけ)のむすまで

 

 

まず最初の「君」には、

 

①国家元首(天皇)

②主君

③敬称

④あなた

 

の意味があります。

このうち何を指しているかは、ここでは保留にして後述することにします。

次の「代」にも、

 

①時代

②国

 

の意味がありますが、これも後述します。

参考・三省堂古語辞典

 

「千代」「八千代」は、千年、八千年という意味で、とても長い時間の表現です。

 

「さざれ石」とは、細かい石です。

漢字で書くと「細石」となります。

それが、「巌」となって苔を生やすまで、という意味です。

巌は巨石のことです。

 

昔は、細かい石が長い年月をかけて成長して、大きな岩になると考えられていました。

つまり、この部分も、とても長い時間を、昔ながらの言い回しで表現しているわけです。

 

つまりこの歌は、「君が代」が永遠に続きますように、という歌なのです。

 

本当に、ただそれだけです。

 

さて、それでは「君」と「代」は何を指しているか、なのですが、その前に別のお話をします。

 

君が代の歌詞は、文字数を数えるとわかるのですが、字余りの和歌になっています。

そして、作詞者不明となっています。

 

この歌が国歌と定められたのは、明治初期のことです。

西洋諸国を見ると、外交上の儀礼として、国旗の掲揚と国歌の演奏が必要であると気づいた政府は、国歌の歌詞を定めることから始めました。

そしてその頃、おめでたい歌として民衆一般に伝わっていた「君が代」に、メロディーを新たに付けたのです。

 

君が代は江戸時代当時、宴会のお開きに、舞納めに、舟歌に、正月に、祝い事に、盆踊りに、と、実に便利に使われていました。

 

さて、それでは「君が代」という言葉は、どう解釈すべきなのでしょうか。

 

普通に解釈すると、天皇の治める世、つまりは日本国のことでしょうね。

祝い事に歌われる時は、祝われる対象、つまり「あなた」という意味だったかもしれません。

 

つまり、私なりにこの歌を解釈をすると、「めでたい時」というのはつまり「平和な時」でしょうから、

 

「この平和な今が、これからもずっと続きますように」

 

という意味と考えても問題ないと思います。

 

これが国歌「君が代」の意味です。

 

以上。

 

ちなみに、諸外国の国歌は、大抵は戦いの歌か、国を称える歌です。

戦いの歌の場合は、軍歌が原型となっています。

だから、曲調も勇ましいマーチですし、歌詞も、「血」「勝利」などの言葉が多く登場します。

国を称える歌の場合は、「偉大な」「我らの」「永遠に」というような、

かっこいい賛辞が並びます。

 

それに比べて日本の国歌は、なんて平和でシンプルな歌なのでしょうか。

 

また君が代は、古くは905年(平安初期)に編纂された『古今和歌集』に入っています。

そして、この時点ですでに作者不詳でした。

 

作者不詳とはつまり、

 

「誰が作ったのか知らないけど、どこかから伝わってきて知られている歌」

 

という意味です。

もう少し踏み込んで解釈すると、

 

「何となくみんなが知っている歌」

 

とも考えられますし、

 

「誰が作ったのかわからないくらい古くから伝わる歌」

 

とも想像できます。

 

西暦905年に、ですよ。

 

つまり、千数百年以上も歌い継がれている歌なのです。

もちろん、国歌としての歌詞の古さでは、ダントツで世界一です。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義

 

 

 

 

 

参考資料

 

 

 

アメリカ国歌「星条旗」

 

おお、見ゆるや 夕明けの淡き光を受け

先の夕暮れ 陽が落ちる時 我等が歓呼したもの

其は太き縞と輝く星条旗を我々は目にした 危き戦の間

城壁の上に見た 勇壮に翻りし 彼の旗

狼煙の赤き炎立ち 砲音宙に轟く中

耐え抜き 旗は尚其処にあり

おお、星散りばめたる旗は 今猶棚引くか

自由なる大地 勇者の故郷に

 

岸辺の霧 其の濃く深き帷の中

傲慢なる敵の軍勢 畏れ息潜め

彼は何ぞ 断崖聳ゆる向かう

時折吹く微風に 隠れする

今正に 朝の新しき光を一筋受け

大いに輝き 風を受けはためく

其は星散りばめたる旗よ 永久に棚引け

自由なる大地 勇者の故郷に

 

そして斯も得意げに宣誓せし彼の一塊は何処ぞ

戦いの浪費と戦争の乱雑が

故郷も国家も我等に最早残さじと

彼らの血は彼らの汚れし跡は彼らの血で贖われたのだ

小屋は彼らの雇員と奴隷制度を助けまじき

潰走の恐れと死の暗闇から

其は星散りばめたる旗よ 永久に棚引け

自由なる大地 勇者の故郷に

 

おお、斯く不断にあらん事を

自由世界が彼らの愛情される家と戦ひの

浪費の間に立たう時

勝ちと泰平で恩恵され 天に助されし地所が

我等に状態を創り擁護したる力を

誉めん事を我等は破るべし

其が正に我等の原理なる時は

そして此が我等の金言ならん事を

「我等のモットーは神のみが知るという事を」

其は星散りばめたる旗よ 永久に棚引け

自由なる大地 勇者の故郷に

 

 

韓国国歌「愛国歌」

 

東海が乾き果て、白頭山が磨り減る時まで

神のお護りくださる我が国、万歳

※『無窮花、三千里、華麗な山河、

大韓びとよ、大韓をとわに保全せよ』

 

南山の老松が鉄の鎧をまとったように、

風霜の変わらざるは、我等の気性なり。

※『』繰り返し (3番以降も同じ)

 

広い秋の空が雲ひとつなく澄み渡り、

輝く月は、我等の精神、一片丹心なり。

 

この気性とこの心で忠誠を尽くし、

辛くとも、楽しくとも、国を愛そう。

 

 

中国国歌「義勇軍進行曲」

 

起て! 自由を望むのなら!

我が血肉で新たな長城に!

中華民族今せがられてる

人々最後の咆哮上け。

立て! 立て! 立て!

一心同体、

砲火の中で前進!

砲火の中で前進!

前進! 前進! 前進!

 

 

イギリス国歌「女王陛下万歳」(または「国王陛下万歳」)

 

おお神よ我らが慈悲深き女王(国王)を守りたまへ

我らが気高き女王(国王)よとこしへにあれ、

神よ女王(国王)を守りたまへ:

君に勝利を幸を栄光をたまはせ

御世の長からむことを:

神よ女王(国王)を守りたまへ

 

おお主よ、神よ、立ち上がられよ

汝と君の敵を消散せしめたまへ

打ち砕きたまへ

彼らが策を惑はしたまへ

彼らが騙し手を挫きたまへ

我らが望みは汝の上に!

神よ我等を救いたまへ

 

汝が選り抜ける進物の

君に喜びと注がれむことを;

御世の長からむことを:

我らが法を守りたまひ

絶えず理想を与へたまへ

声無きも声高きも謳ひぬ(歌ふ心で歌ふ声で)

我らが神よ女王(国王)を守りたまへ

 

神の御慈悲は

この御土のみでなく

そのくまなきに知らるる!

主はこの御国に、この広き世界の

全て人間は一つ兄弟たり、

一つ家族たることを知らしめす

 

闇に潜みし敵より

暗殺者の魔の手より

神よ女王(国王)を守りたまへ

君が上に汝が腕を広げ

ブリテンが為に防がむ

我らが母(父)にして君にして友

神よ女王(国王)を守りたまへ

 

主はウェイド元帥をして

その強き祐けにより

勝利をもたらしめむ

乱を制しめむ

轟々たる濁流の如くして

反逆せしスコットランド人を破らしめむ

神よ女王(国王)を守りたまへ

 

 

フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」

 

進め 祖国の子らよ

栄光の時が来た

我らに対し 暴君の

血塗られた軍旗は 掲げられた

血塗られた軍旗は 掲げられた

聞こえるか 戦場で

獰猛な兵士の怒号が

奴らは来る 汝らの元に

喉を掻ききるため 汝らの子の

※『市民らよ 武器を取れ

軍隊を 組織せよ

進め! 進め!

敵の汚れた血で

田畑を満たすまで

市民らよ 武器を取れ

軍隊を 組織せよ

進め! 進め!

敵の汚れた血で

田畑を満たすまで』

 

陰謀をめぐらす王とそれに仕える国賊の

奴隷連中はいったい何を望んでいるか?

この汚らわしい鉄の鎖は何のためにあるのか?

この長い鉄枷は誰のためにあるのか?

同志たるフランス人よ!これらは我らのためにあるのだ!

ああ!何たる屈辱!

それが、我らにどれほどの憤激を引き起こすか!

やつらは、明確に、

我らを昔のような奴隷に戻そうと企んでいるのだ!

※『』繰り返し (3番以降も同じ)

 

何と!外国軍がわが祖国を法で定めるというのだ!

何と!金目当ての傭兵どもが

我らの気高き戦士を打ち倒そうというのだ!

ああ!我らの両手を鎖で縛り

我らの首に頚木をはめるのだと!

下劣な暴君どもは我らの運命の支配者になるのだと!

 

戦慄せよ!暴君どもそして国賊どもよ!

あらゆる徒党の名折れよ!

戦慄せよ!貴様らの親殺しの企ては

最後にはその報いを受けるのだ!

国民すべてが、貴様らと戦う戦士だ!

たとえ我らの若き英雄が倒れようとも

大地が英雄らを再び生み出すのだ!

貴様らとの戦いの準備は整っているのだ!

 

フランス人よ、寛容な戦士として

認容と攻撃を慎むことも考えよ!

あの痛ましき犠牲者と

我らに武器を向けた事を後悔した

犠牲者たちを許すのだ!

ただしあの血に飢えた暴君と

ブイエ将軍の共謀者らは別である!

あの無慈悲で残虐な虎どもは

自分の母胎を引き裂くのである!

 

神聖な祖国への愛よ!

我らを復讐への道へと導きたまえ!

自由よ、愛しき自由よ

汝の守護者とともに、戦おう!

我らの国旗の下、勝利は我々の掌中にあり、

その雄雄しい声の下へと駆けつけよう!

我らの敵は絶望に打ちひしがれる中、

自由の勝利と我らの栄光を目の当たりにするだろう!

 

我らは進み行く、父祖の土地へと

父祖の遺骸と美徳が遺る土地へと

生きながらえることは本望ではない!

亡き父祖と棺をともにするのだ!

祖先の復讐をするのかさもなくば祖先の後を追い死ぬか

これこそ我らの気高き名誉よ!

 

 

ドイツ国歌「ドイツの歌」

 

統一と正義と自由を

父なる祖国ドイツの為に

その為に我らは挙げて兄弟の如く

心と手を携えて努力しようではないか

統一と正義と自由は

幸福の証である

その幸福の光の中で栄えよ

父なる祖国ドイツ

 

 

スペイン国歌

 

スペイン万歳!

武器を取れ、

スペイン人民の子供達よ

再び帰り蘇る人々よ

祖国に栄光あれ

海の青き流れと太陽の辿る道を知った祖国に

スペインの勝利!

金床と車輪が

韻律を奏でる

信念の賛歌を

それらと共に立ちあがり歌おう

困難と安息から生まれる力強い新たな生命を

 

 

タイ国歌

 

タイ国は国民であるタイ人の血と肉でできている

タイの領土全土は総て存続する

タイ人は純粋であるから

調和を愛し 平和を愛す

しかし、戦争となっても恐れはしない

独立は誰にも侵せない

一滴の血をも残さず捧げるであろう

タイ人が国を勝ち抜き再びの勝利が得られるまで

万歳!

 

 

※ 歌詞のない、曲だけの国歌もあります。

 

※ 君が代は世界一短い国歌ですが、1903年にドイツで行われた「世界国歌コンクール」で一等を受賞しています。