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あすなろ139 植物の系統分類(過去記事再掲)

2018年3月6日投稿

 

 

 

2013.05号

 

学校の教科書の内容は、最新の学説に比べると古い、なんて話はよく聞きます。
しかし、だからといって、教科書の内容を否定するのは、私はあまり好きではありません。
教科書の内容は、あくまで基礎知識であって、一般常識である、と解釈していますので。

 

もちろん、あんまり大幅に内容がおかしいとわかってきた場合は、
やっぱり修正が必要だとも思います。

 

(典型例は、隣国のプロパガンダをそのまま載せている南京大虐殺です。
「証拠」は全て捏造と証明されて、完全に嘘だと論破されているにもかかわらず、未だに教科書に載っています)

 

ですが、鎌倉幕府の成立の年が10年ずれたとか、その程度のことは、別に教科書を直すまでもないことだと思います。
私は最近テレビを全く見ないのですが、どうもそういうことを喜んで放映している番組もあるようですね。

 

そういう所に登場する「専門家」は、さもその「学説」が正しいように言うでしょうし、それが最近の学会では常識とか主流とか言うんでしょ、どうせ。
しかし、本当にそうなのでしょうかねえ。
実はその人は、変なことを一人で唱えているだけで、学会からは「またお前か......」と思われている有名人でした、なんて可能性もありますよね。

 

まあ、そこまで極端な話じゃないとしても。

 

そもそも学会というところは、新しく思いついた自説を主張する場です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
ですから、「学会で云々」という言葉に対して、必要以上に権威を感じることはないと思います。

 

例えばある学会では、いつもXという学説を主張するA教授と、その説を否定するB教授がいて、毎回毎回その二人が口角泡を飛ばすのが名物になっている、なんて場合もあります。
二人ともその世界では重鎮の学者ですから、どちらもテレビに呼ばれることがあります。
そうすると、そのどちらが呼ばれるかによって、「最新の学説」が全く違った内容になるわけですよね。

 

つまり、その程度のことなのです。

 


言語学会の大野晋さん(故人)と風間喜代三さんが、ちょうどこんな感じでした。
大野さんの日本語タミル起源説がこれですね。
珍説扱いされていましたが、私は結構好きですよ。


 

それでもやはり、新説に対して「やっぱりこちらの方が正しいのではないのか?」
という同意が増えてくれば、教科書を置いてきぼりにしたまま、「常識」が変わってくることがあります。

 

私の知っている範囲では、最近一番大きく変化したのが、動植物の系統分類の分野です。
系統分類というのは、「何が何から進化したのか」という、流れを念頭に置いた分類方法のことです。

 

系統分類という学問が興った当初は、形や生活様式などの特徴から、どの種類がどれと近い仲間という判断をしていました。
そのうちに、化石というものがわかるようになってからは、絶滅種のことも考えながら分類するようになってきました。

 

そして近年は、それにDNA解析(ゲノム解析)や蛋白質(たんぱくしつ)解析などの、分子生物学的アプローチが加わるようになってきています。
それによって、次第に色々と面白いことがわかってきているようです。

 

有名どころでは、クジラの系統的な位置です。
クジラは何の仲間といえるのでしょう。

 

まずは基礎知識から。

 

哺乳類は、かつては齧歯目(げっしもく)、食肉目、偶蹄目(ぐうていもく)、奇蹄目(きていもく)、などなど、というような分類でした。
齧歯目とはネズミの仲間、食肉目は肉食のイヌ・ネコ・クマの仲間、偶蹄目は足の指が偶数となっているウシの仲間、奇蹄目は足の指が奇数であるシカの仲間です。

 

さて、クジラにはもちろん、齧歯目のような前歯もありません。
食肉目のようなカギ爪もありません。
そしてウシの仲間もシカの仲間も、基本は草食動物ですが、クジラは完全な肉食です。
そんなことから、クジラは完全に独立した「鯨目(くじらもく)」という仲間に分類されていました。

 

しかしDNA解析を進めていくうちに、クジラはなんと、かなりカバに近いということがわかってきました。
そして、そんな風に言われちゃうと、「よく見りゃこことここがカバっぽいわ」ということが、次第に見えてくるわけです。
結局現在では、偶蹄目と鯨目は合併して、「鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)」なんて名前に変わって呼ばれています。

 

というような分類の見直し整理が、今まさに、あちこちの生物で起こっています。
私の好きな昆虫の世界でも、かつては昆虫の一部だった分類群が、「こいつら脚が六本だけど、やっぱ昆虫じゃないわ」となって、いくつも昆虫から除外されちゃっています。

 

そしてそれが植物の世界では、もっと深刻な話になってきています。

 

小中学校の教科書では、被子植物は双子葉類と単子葉類に分かれて、双子葉類は合弁花と離弁花に分かれている、となっています。
これは、入試にも思いっきり出る内容です。

 

合弁花......花びらがくっついてる連中
離弁花......花びらが分かれている連中

 

しかし、DNA解析が進んでくると、この分類法は怪しいということになってきました。
それどころか、被子植物のグループ分け自体、一部修正では済まされなくなってきて、「分類を一からやりなおし」状態という、とんでもないことになっています。

 

私なんて、最初から植物はさっぱりですから、今回は私がわかる話だけ書きます。

 

双子葉類は、どうやら基本が離弁花である、ということになってきているようです。
そして、そのうちの一部が、進化していくうちに合弁花を咲かせるようになった、という流れなのだそうです。

 

双子葉/単子葉の分け方についても、「被子植物は、まず双子葉と単子葉にわかれていて、」という話ではなくて、被子植物の基本は双子葉類なのだということです。
そしてその一部が、進化の過程で単子葉類となった、ということみたいですね。

 


もうちょっと詳しい続編もあります。
あすなろ193 ゲノム解析と分類学


 

ただし、この分け方は、あくまで系統分類学上のものです。
ですから「教科書は間違っている!」などというつもりはありません。

 

教科書は、

 


どうぶつを、ふたつにわけました。
とべるなかまは、すずめ、こうもり、ちょうちょ。
とべないなかまは、だちょう、うし、ありんこ。


 

という分け方だと思えばいいわけです。
こういった分け方は、分類学的には多系統群と言います。
これはこれでアリなのです。
はい、ぼくは認めますよ。

 

でも、このもやもやした気持ちはなんだろうか......

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義