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2004.07号
一応、梅雨だそうです。
そう?
ほんと?
……雨にちなんで、カエルのお話でもしましょうか。
三年前から、庭で稲を育てています。
もちろん商売ではなく、遊びでです。
ウチに来る新聞屋さんは、時々オマケとして植物の種を置いていくことがあります。
それがあるとき、「観賞用稲(もちろん食べられます)」と云う種もみでした。
以来、庭に即席の田んぼを作って、育てています。
プラ舟ってご存じです?
左官屋さんがコンクリや土を練る時に使う、四角い桶のことです。
今年は、このプラ舟に土と水を入れて田んぼを作りました。
それでも少々作付け面積が不足しましたので、追加で小さいバケツも田んぼにしました。
とやっていたら、そのうちの小さいバケツの中に、オタマジャクシが「湧き」ました。
それまでしばらく棲んでいたのがアマガエルだったし、他の鳴き声も聞いていないので、多分このオタマジャクシもアマガエルだと思います。
アマガエルのオタマジャクシは特徴的な顔をしていると聞いていますが、現時点では小さくてよくわかりません。
って書くと、また「カエル詳しいんですね」とか云う方がいらっさいますが、そうでもないです。
カエルはどちらかと云えば専門外です。
それでも、この近辺で見られるカエルは、全種類区別できますよん。
ふふん。
しゅごいでしょ。
ふふふん。
──でもそれには、ちょっとしたカラクリがあります。
日本には、43種類のカエルが生息しています。
こんなのすぐには覚えられません。
ところがそのうち、茨城のこの近辺に棲んでいるカエルは、全部で10種類。
実はたった10種類しかいないんです。
鳥や虫に詳しくなろうとすると、膨大な種類の特徴を頭に入れなければいけませんが、カエルはたった10種類。
だから、覚えるのも簡単なんです。
そのうち、緑のカエルは2種類のみ。
大型で単色のものがシュレーゲルアオガエルで、小型で目の後ろに黒い帯があるのがアマガエル(ニホンアマガエル)。
シュレーゲルアオガエル
アマガエル
簡単でしょ。
残り8種類のうち、ヒキガエル(アズマヒキガエル)、いわゆるガマガエルと、ウシガエルは見ればすぐにわかります。
ヒキガエル
ウシガエル
なので、残り6種類。
ツチガエルも、灰色で体表にイボイボを持つのですぐにわかります。
一度見れば絶対に忘れないのですが、見たことないでしょうか。
ツチガエル
というわけで、残り5種類。
いわゆるトノサマガエルのような、緑に黒班を持つ色のカエルはトウキョウダルマガエルです。
トウキョウダルマガエル
残り4種類。
カジカガエルは、渓流にしか生息しません。
また、声がかなり特徴的なのと、どうせ滅多に出会えません。
神経質でなかなか姿を見られないこともあり、見た目を覚えるのは後でいいでしょう。
カジカガエル
これで、残り3種類。
残っているのは、赤茶色のカエルです。
そのうち、指先が丸いコブ状になっていて、アゴの下に模様があるのがタゴガエル。
タゴガエル
あと残り2種類。
赤茶色で指先がコブになっていないのは、ニホンアカガエルとヤマアカガエルです。
この2種類、背中と脇腹の境目に縫い目のような「スジ」が入っています。
そのラインが、まっすぐなのがニホンアカガエル、目の後ろで外側に曲がっているのがヤマアカガエルです。
ニホンアカガエル
ヤマアカガエル
はい、以上がこのあたりで見られるカエル、全種類です。
これだけ覚えちゃえば、あなたはカエル博士です。
尊敬されちゃうかも~。
とは云っても、この近辺で普通に見られるのは、大抵がアマガエルでしょうね。
あとはせいぜい、見るとしてもウシガエルとトウキョウダルマガエルくらいでしょうか。
他のカエルは、すっかり少なくなりました。
例えばアカガエル。
かつては、アマガエルと競合しながら、田んぼにも息していました。
毎年、田植え前の水たまりに産卵するのがアカガエル、田植え後に産卵するのがアマガエルでした。
しかし現在では、このわずかな差が、決定的になってしまったのです。
最近の田んぼは、稲がある程度育ってくると、水を抜きます(中干しといいます)。
根に空気を通して、発育をよくするためです。
それ以降、田植えの直前まで水をいれません。
そのため、アカガエルは産卵する場所がなくなってしまったのです。
今ではすっかりアマガエル一色です。
アカガエルもいないってわけではないんですけどね。
他にも、数の減ってきている種類が結構あります。
アマガエルならよく見かけるので、カエルが減っていると云っても実感がわかないかもしれません。
しかし考えてみてください。
カエルという生き物は、水と陸地と、両方揃ってないと生きられないのです。
淡水があれば陸地があるに決まってる?
でもコンクリートの水路で親になっても、吸盤のあるアマガエル以外、陸地にあがれませんよ。
それどころか、誤って水に落ちたカエルが死ぬこともあります。
カエルなのに溺死です。
変ですよね。
でも日本産のカエルって、水中ではエサを捕れないんですよ。
カエルは基本的に、身を守る武器や毒を持ちません。
オタマジャクシも同様です。
そのため、様々な動物の重要なエサとなります。
カエルの多い環境には、捕食者が居着きやすいということなのです。
それが、例えばアマガエル一種類だけになるということは、同時にアマガエルの生活サイクルに合わない動物もいなくなるということなのです。
つくば市が、トウキョウダルマガエルを中心とした生息分布調査をしています。
調査結果を見る限り、カジカガエルとタゴガエルは見つかっていません。
もう、いないのかもしれません。
これで残り8種類……
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義