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あすなろ107 果物(過去記事)

2018年3月21日投稿

 

 

 

2010.09号

 

私は筑波大の生物にいたのですが、そのころの恩師(元教授)が現在、学園都市で「サイエンス・キッズ」というものを主催しています。

小学生を対象に理科などの教育活動(といったら少し違うかな?)を行っているのですが、ウチの子も、今年度からこれに参加しています。

 

そしてつい先日、それのキャンプがありました。

その際、「レクリエーション」の時間に、即席の「講師」として、果物についてのウンチクを垂れてきました。

そのために一夜漬けで調べたおかげで、果物についてちょっと詳しくなりましたので、そんな話をしましょう。

 

まず、果物というものの定義から。

 

リンゴ、カキ、キウイ、マンゴー……と、スイカ、メロン、バナナ、イチゴ……。

今、果物を二つのグループに分けてみたのですが、どういう分け方かわかりますか?

 

二つに分けたうち、前者は紛れもない果物です。

しかし、後者は分類法によっては野菜とされるものです。

 

果物とは何か、を決めるとき、その線引きが難しい場合があります。

 

例えば、メロンはウリの仲間です。

普通のウリは野菜に、メロンは果物に分類したとしても、甘いウリであるマクワウリは、どっちに入れればいいのかかなり微妙な存在になってきます。

つまり、厳密な定義が非常に難しいのです。

実際、トマトは野菜か果物か、なんて話は、過去にアメリカで国を相手に裁判にまでなったくらいです。

 

そこで、法律など厳密さを求められる場合は、植物学的分類のうち、「樹木」は果物、「草本」は野菜、と分けることにしています。

それに従うと、一年から数年で枯れてしまう「草」にできる実は、全て野菜ということになりますので、スイカやイチゴは野菜、とも言えるのです。

 

果物は、全てが植物の「実」であることは間違いないのですが、その実のできかたにも、色々な種類があります。

 

例えば、カキの構造を見てみます。

カキには一番外側に薄い皮があり、その内側に厚い層があり、種子の周囲にもう一つ薄い皮があり、さらに中に種があります。

この三層構造を、外から外果皮、中果皮、内果皮と呼びます。

従って、カキの食べる部分は、中果皮ということになります。

(図参照)

 

 

同様に、スイカの場合は一番外の緑色の皮が外果皮ですが、その内部の白い部分が中果皮にあたります。

そして、赤い部分は内果皮であり、スイカは内果皮を食べていることになります。

 

メロンはスイカと同じウリの仲間ですが、こちらは中果皮を食べています。

メロンの場合、中心に種の入った「穴」が開いていますが、その穴の周囲が内果皮になります。

 

ミカンなどの柑橘の場合は、皮のうちの橙色の部分だけが外果皮です。

皮の内側についている、白いスポンジ状の部分は中果皮です。

その内側の、「実」の入った袋が内果皮です。

つまり、ミカンでは「果皮」は食べる部分ではないのです。

 

では、すっぱいあの部分は何かというと、種の周辺の毛が変化したものなのです。

メロンを切ると、種が糸状のもので芯につながっていますが、ああいう糸がふくらんだのが、ミカンの食べる部分となっているのです。

 

 

モモの場合は、カキ同様、中果皮を食べます。

外側の皮が外果皮、食べる部分が中果皮なのですが、内果皮は非常に硬い殻状になっています。

そして、その内側に種子があります。

モモを食べると、中にでっかい「種」が一つ入っているように見えるのですが、あれは実は種そのものではなく、内果皮なのです。

あの中にあるのが、本当の種です。

ウメも同じで、梅干しの「天神様」が種です。

 

モモのように、内部に種の入った殻を持つ植物は、ウメやスモモのような近縁種以外にも、マンゴー、プルーンなどがあります。

このような殻は、核果(かくか)と呼ばれています。

ブドウの種も、同じく核果です。

 

リンゴやナシは、さらに違う構造で成り立っています。

リンゴを切ると、中央の種の周囲だけ少し違う色で、少し酸っぱくて「芯」として捨てますよね。

でも、あそこがリンゴの「本当の実」なのです。

その周囲の、実際に食べる部分は、花床(かしょう)または花托(かたく)と呼ばれる、花の付け根の部分がふくらんだものです。

 

このような実は、中学校で習うような、「子房→果実」という流れとは違う部分が「果実」を覆っていますので、「本来の実ではない」ということで偽果と呼ばれています。

 

 

偽果の例は、他にもイチゴなどがあります。

イチゴの食べる部分も花床です。

イチゴの花は、花床から多数のめしべが出ています。

その一つ一つが実となり、肥大化した花床の表面につきます。

つまり、イチゴの表面にくっついている「種」が、本当の実なのです。

 

これまでは、一つの花からできる実の話でしたが、パイナップルの場合は、また違います。

一つの軸から多数の花が咲き、その実が全部つながってしまったのものが、あのパインとなります。

皮のでこぼこした部分、一つ一つが花のあとです。

パインの断面を見ると、表層付近に穴が開いていますが、あれが内果皮の内部、種のある部分です。

イチジクもそういう意味では似た構造なのですが、内と外がパインとは逆転しています。

 

 

果物に関しては、他にもまだネタはあるのですが、今回はこのへんで。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義