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2017.10号
秋です。秋の七草は言えますか?
最近、塾生に配った下敷きにも書いておきましたが、こんな感じです。
オミナエシ
ススキ
キキョウ
ナデシコ
フジバカマ
クズ
ハギ
それぞれの頭を取って、「お好きな服は」と覚えます。
春の七草の方は覚えている方も多いようですが、
「セリ・ナズナ ゴギョウ・ハコベラ ホトケノザ スズナ・スズシロ これぞ七草」
と、七五調で覚えます。
作者不詳の、古来より伝わる伝統的な覚え方です。
※なお、ウィキペディアには「覚え方と呼べるような語呂合わせは知られていない」なんて書いてありました。
まあ、所詮はウィキペディアですから。
春の七草とは、一月七日=人日の節句(じんじつのせっく)の「七草がゆ」に入れて食べる野草リストです。
元々日本には、春先に「若菜摘み」をして、それを入れて食べる七草がゆの風習(もしくは宮中行事)がありました。
ただし、その際に入れる「七草」は、どうも平安時代頃までは、違う種類だったようです。
(927年「延喜式」)
そんな春の七草が、現在と同じ種類となった記録としては、1360年代の河海抄(かかいしょう)という書物が初出のようです。
河海抄というのは、室町時代に書かれた、源氏物語の注釈書(ガイドブック)です。
源氏物語自体は、1008年に書かれたとされていますので、室町時代から見るとすでに300年以上昔の作品です。
つまり、室町当時としてもすでに「古典」だったために、昔の文化を読み解くためには、そういうガイドブックが必要だったのでしょう。
ちなみに河海抄の時代から見て、源氏物語まではどのくらい「昔」だったのかというと……
今からでいえば、だいたい徳川綱吉の時代くらい昔のことにあたります。
……日本の歴史って、長いですねえ。
長すぎてクラクラすることがあります。
と、ここまでが春の七草の話です。
一方、秋の七草は食べません。
秋の方は単に、秋の野に咲く花リストです。
秋の七草の初出は、759年の万葉集となっています。
どうも、山上憶良くんが選んだようですね。
これは、源氏物語よりもっと前の、今から1200年以上も前のことですから、こう見ると秋の方が古いということになります。
しかし発想のきっかけは、やはり七草がゆにあるのではないか、と私は思っています。
七草がゆが始まったのは、いつからなのかはわかりませんので、七草がゆの方が万葉集よりも古い可能性は十分にあります。
前置きが長くなりましたが、そんな秋の七草です。
写真を挙げていきます。
私は、植物にはあんまり詳しくないので、自分にとっての勉強も兼ねております。
先に挙げたとおりの、「お好きな服は」の順に行きます。
まずオミナエシ。
……って、どんな花?
うーん。
知らない。
こうやって眺めていると、どっかで見たことはあるような気がしてくるのですが、やっぱり野草としては見覚えがありません。
調べてみると、どうも野草としてはごく局地的にしか自生していないらしいです。
次は、ススキです。
こちらは、各地で普通に見られますよね。
ススキと言えば、一時期は外来種のセイタカアワダチソウに駆逐されると大騒ぎになっていたこともありましたが、現在ではススキの勢力も盛り返してきて、なんとなく共存しているようです。
次のキキョウは、庭先以外では見ないよなあと思ったら、自生地のほとんど残っていない絶滅危惧種なんだそうです。
普通に見られる花ですので、なんかびっくりです。
キキョウといえば……。
えっとですね、小学生の頃、通学路に植えてあったキキョウのつぼみを破裂させることを流行らせたのは私です。
その節はすみませんでした。
次はナデシコ。
それとフジバカマ。
ナデシコは、名前だけはよく聞きますよね。
よく売っています。
塾の前に植えておいたら野生化したのですが、今はどうなったやら。
フジバカマは、大学近辺で見たことある気がします。
しかしこちらも絶滅危惧種だということですので、きっと園芸ものでしょう。
最後はクズとハギです。
共にマメ科の植物ですので、花の形は似ています。
まずはクズ。
そしてハギ。
さて。
クズはいいとして、問題はハギです。
下の画像は冬の姿なんですが、あのですね、これ、草じゃないんです。
木なんです。
ただ、伸びている枝は草みたいに青々としていますので、最初に七草として選んだ山上憶良くんが間違えたのも良しとしましょう。
それにしても、今回の話で一番驚いたのは、普通に近所で売っているのに、実は絶滅危惧種だという種類がいくつもあるということです。
どうも、園芸植物の世界では、珍しくないらしいですね。
でも私の場合は、これを知って、最初に連想したのはヒトコブラクダでした。
こちらは、野生に限ると完全に絶滅種なんですよね。
ラクダはすぐに出てくるのに……植物は、ほんとまだまだ知らないことばかりです。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義