2020年12月
あすなろ227 天部
2020.10号
地球の終わりの話から、仏様の如来、菩薩と続いて、次は天(てん)の話です。
前回も書いたのですが、天は「ほとけさま」ではありませんが、天の像は「仏像」です。
例えば、阿修羅天の像が有名ですよね。
いや、阿修羅展ではなくて、阿修羅天なのですが……。
ともかく、こんなのが天です。
ただ、天界の「天」と紛らわしいので、こちらは「天部」と呼ぶこともあります。
つまり、「天という階級」、言い換えれば「クラス天」です。
いや、Class10なんて言ってませんよ。
んで、前回の如来と菩薩のように、天の名前を挙げていってもいいのですが、
こちらはちょっと数が多いです。
多いんです。
例えば、四天王、十二神将、二十八部衆、というセット売りの人たちだけでも、
合計で四十人余りいるわけです。
もちろんこれだけじゃないですよ。
あ、そうそう。
マンガとかゲームとかによく名前が出てくる「四天王」って、ここから来てますからね。
あれは仏教用語です。
また四天王といえば、東大寺の戒壇院に安置されている四天王像が、多分一番有名どころかと思います。
戒壇院って火事で焼けたんだっけ? と思って今調べてみたら、焼けたのは江戸時代以前だったようです。
何か勘違いしていました。
では四天王はなぜ四人なのかというと、それぞれで四方を守るからです。
以下、東大寺の四天王像です。
東方・持国天
南方・増長天
西方・広目天
北方・多聞天
実は私、四人の名前は出るのですが、方角は覚えていませんし、見てわかるのは広目天だけです。
おじさんすぐ忘れちゃうの。
全員、足下に天邪鬼(あまのじゃく)を踏みつけている像が多いです。
そしてこの四人は、帝釈天(たいしゃくてん)という英雄に仕えています。
そして帝釈天は、もう一人の梵天(ぼんてん)と並んで、天部のトップに君臨しています。
他にも、この手の武闘派は数多く在籍しています。
寺の山門にいる、仁王(におう)もそうです。
中学生以上は、歴史で金剛力士像(こんごうりきしぞう)という名前を覚えたと思います。
運慶と快慶の、鎌倉美術のあれです。
(……覚えてるよね?)
あの金剛力士も、天のうちの一人です。
先に書いた十二神将(じゅうにしんしょう)も、名前からわかるとおり武闘派の兵隊です。
十二神将は、それぞれ別の菩薩・如来の守りについているようです。
またそれぞれが、十二ヶ月や十二支に相当するようです。
金剛力士
十二神将
一方、武闘派でない天も多数います。
そもそも天とは、インド各地にて信仰される神々を、仏教に取り入れた存在なのだそうです。
ですから、あの有名なガネーシャもいます。
仏教界では、歓喜天(かんぎてん)といいます。
歓喜天は、なぜか抱き合った二体で一体とされることもあります。
しかも大抵、片方がもう片方の足を踏んでいるという、不思議な姿をした像です。
インドの神としては、他にもヴィシュヌ、カーリー、シヴァとその化身が、
天として存在しているようです。
インドの神様なんて、大抵は名前も聞いたことのない人たちですけど、
シヴァの化身の一人であるマハーカーラは、仏界では大黒天と呼ばれています。
また、私の実家近くにある豊川稲荷は、本尊が吒枳尼真天(だきにしんてん)と呼ばれる天です。
こちらは、キツネと深い関わりがあるとされています。
女性の天もいます。
鬼子母神(きしぼじん)も天とされています。
吉祥天や弁財天も、名前の通り天に所属しています。
吉祥天
弁財天
さて。先ほどから、大黒天も弁財天も、違和感を感じませんでした?
そう。
七福神では、こんな人たちじゃないですよね。
というのもですね、
――――いやちょとまて。
えっと、七福神、全員の名前言えますか?
いやいやその前に。
――――小学生、七福神って知ってますか?
……なんか心配なので、次回は七福神の話にした方がいいでしょう……か、ね?
はい、では次回、七福神のお話。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義