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2016.03号
少し前のこと、この場でちらし寿司のお話をしたことがあります。
(2015.06:No.164)
その回は「俺の食いたいちらし寿司が売ってないぞギャー」という内容だったのですが、同じような代物はまだ他にもあります。
例えば、おでんとかおでんとか。
おでんで画像検索すると、ウィキを初めとしてこんなのが出てくるわけですが、
違う違うぼくのおでんは違う。
こんなに汁に色はつかないし、そもそも油っぽい具が入っている時点で私の知るおでんとは別物です。
いいですか、教えてあげます。
こういうのは、
「関東煮(かんとうだき)」
というのです。
……と書こうとしたら、日本語変換ソフトとしては賢いと思っていたATOK2013が関東煮という単語を知らないし、どうなってるんでしょうか。
私はこの読み方を小学生の頃に教わりましたし、神社のお祭りでは関東煮と書いた屋台を見たものですが。
おでんという名の由来は、「田楽(でんがく)」から来ています。
では田楽とは何かというと、農村に伝わる伝統芸能での一つです。
元はおそらく「一年の仕事始めの儀式」だとか「神へ捧げるの豊年の踊り」あたりではないかと思われるのですが、実際の起源は古すぎてよくわからないそうです。
その田楽の中で、「一本高足」という踊りがあります。
田楽踊り 一本高足(茨城県金砂神社)
一本の竹馬のようなものに乗って跳ねる踊りですが、その姿と似ている食べ物であるということで、串焼きの豆腐を田楽と呼ぶようになったとのことです。
田楽豆腐(味噌田楽)
味噌をつけて食べます。
発祥は上方(関西)のようです。
そこから発展して、豆腐以外の野菜などの串焼きに味噌をつけた料理も、一様に田楽と呼ぶようになります。
それがそのうちに、串に刺して味噌を付けたら田楽だ、というような解釈が広がって、
「ゆでた串物に味噌をつけたものが田楽」
と変化していきます。
すると今度は、最初から煮汁に味噌をぶち込む奴が現れます。
これが名古屋あたりで見られる「味噌おでん」となります。
味噌おでん
味噌おでんはその後、「味噌煮込みうどん」や「ドテ煮」という料理にも発展しました。
ドテ煮というのは愛知県の郷土料理で、赤だしの甘味噌で煮込んだもつ煮込みのことです。
ドテ煮は私の実家でもよく作っていました。
ドテ煮(土手煮)
具は違いますが、基本は味噌おでんと同じです。
さらにここから、味噌の代わりに醤油味で作るものが登場します。
これが関東で食べられた関東煮、通称「おでん」のことです。
ただし、今コンビニで見かける「おでん」の汁は透明に近いのですが、本来の関東煮はもっと醤油で色が濃いものでした。
しかし店売りの際に、中身がよく見えるようにと関西風の透明な汁を採用したのだとのことです。
と、田楽から「おでん」までの流れはだいたいこんな感じなのですが、私の実家で作られていたおでんは、この途中にあった
「ゆでた串物に味噌をつけたもの」
でした。
具材は、大根とコンニャクと、豆腐?ちくわ?ゆで卵?と既に怪しい記憶しか残っておりませんが、そんなものを昆布出汁だけで煮て、自分で味噌をつけて食べる料理です。
味噌は、三河味噌(赤だし)を甘くしたもので、五平餅の味噌と同様です。
味噌カツのタレも、もしかしたら同じかもしれません。
五平餅
岐阜~長野の郷土料理
飯を板につけて味噌で焼く
味噌カツ
名古屋名物として有名らしい
こんな風に書くと、私のおでんは関東では全く縁の無いもののようですが、「単品」ならばそうでもありません。
例えばコンニャクだけならば「味噌コンニャク」として群馬のコンニャク屋さんや秋田・福島の味噌屋さんで宣伝されていますし、大根は、関東では「風呂吹き大根」という名前を付けられています。
風呂吹き大根という料理は、関東に来るまでは全く知らなかったのですが、これが正に「おでん」なのですよ、私にとっては。
味噌コンニャク
風呂吹き大根
ただ、風呂吹き大根を調べていくと、味噌の代わりに「肉そぼろあんかけ」なんてものもあることがわかりました。
でも私に言わせると、それは冬瓜(とうがん)の食い方だろ、と。
あ、冬瓜というのはでかいウリです。
カボチャのように冬に食べる夏野菜です。
あんかけで食します。
現時点では関東で見かけない食材ですが、茨城の農家なら、そのうち生産を始めてくれると信じていますよ。
水菜(みずな)のように、ね。
※水菜は、ほんの二十年前までは、茨城ではどこにも売ってないような関西系野菜だったのですが、今では茨城が生産高全国一です。
茨城の農業パワーが半端ないことを証明する好例です。
冬瓜
ところで、「Oden」で画像検索すると、片目片足で槍を持ったこわいおじさんが出てくることがありますが、これは北欧神話の
「オーディーン」
です。
おでん好きのおじさんというではありません。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義