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2009.05号
口内炎ってのは嫌なものですねえ。
ほんと痛いですわ。
原因はわかっています。
先日、ケーキ材料用の、チョコレートを一袋買ったんですよ。
で、その三分の二くらいを、一夜にして一人で食べちゃったんですよ。
そしたらこれです。
こういうとき、世の皆さんってどういう対策を取るものなのでしょうか?
私の場合は、その日の夜から減カロリーな食生活にチェンジしました。
食い過ぎて荒れたわけですから、要するに控えればいいわけですよね。
ならば、さしあたっては油分を摂らない食事にすればいいわけで。
でも別にダイエットをやっているわけではありませんから、炭水化物と蛋白質(たんぱくしつ)は必要分を摂っておきたいと。
さあこんなとき、頼りになるのはやっぱり和食ですね。
和食といっても、そんな大層なものの話ではありません。
身近なところからいけば、納豆と味噌汁と鰹節(かつおぶし)なんてあたりでどうでしょうか。
納豆の効能については、2年ほど前のこの紙面(2007/3・NO.65)に書いたことがありますので、今回は簡単にしておきます。
納豆は、大豆を菌に発酵させた食品です。
大豆はそもそも、牛肉に匹敵するほどの蛋白質を含んでいて、それを消化しやすい形にしたのが納豆だと思ってください。
もちろん、肉と違って脂分は入っていません。
さらに納豆にはビタミンやミネラルも豊富で、納豆菌は下痢と便秘を解消し、高血圧のリスクを減らす効能を持つという、まるで怪しい健康食品の宣伝文句並の、奇跡のような食品です。
納豆に限らず、大豆製品は基本的に、脂が少なくて高蛋白です。
ですからその点は、味噌汁も同じです。
豆腐も然り、油揚げも然り。
もちろん湯葉(ゆば)も同じです。
さて、次に行きましょう。
鰹節です。
鰹節といっても、出汁のモトという程度の認識の方が多いかもしれませんが、あれも実は結構すごい食品です。
鰹節は、もちろん魚の鰹(かつお)が原料です。
しかし鰹とは、刺身を見ればすぐにわかりますが、大変脂がのった魚です。
ところが、鰹節を出汁にした吸い物には、脂は全く浮きません。
どうなっているのでしょうか。
余談ですが、凡世界的には、スープの出汁といえば、主に動物の骨がらや魚を使います。
(ほぼ唯一の例外はトマトです)
もちろん、脂が浮きます。
中華料理や西洋料理、さらにはタイ料理あたりを見ても、そのあたりは共通です。
しかし、日本の代表的な出汁の素である昆布・干し椎茸・鰹節は、全て脂を出しません。
この点をみるだけでも、ガイジンが和食をヘルシーだといってありがたがるのがわかる気がします。
それはともかく、鰹節とは簡単に言うと、鰹の脂を細菌に分解させ、蛋白質をアミノ酸の「うまみ」へと変化させたものです。
鰹節は、鰹の身の表面に、「カビ」をつけて作ります。
伝統的にカビという呼び名を使いますが、鰹節菌という菌類、といえば、もうちょっとイメージが違うでしょうか。
納豆を発酵させるのは納豆菌、味噌や酒を作るのは麹菌、それと同類と解釈してください。
鰹につけられたカビは、鰹の身から、水分をどんどん吸収していきます。
ある程度日数を置いて、充分にカビを繁殖させたところで、一度カビを取り去って日干しします。
そして、またカビをつけて(二番カビ)、同じように表面で繁殖させます。
これを三番カビまで繰り返すと、内部はすっかり乾燥がすすんで、あの硬い鰹節ができあがります。
現在、大抵のものは三番カビまでですが、会社によっては五番カビ、七番カビまでつけるところもあるようです。
と、こう書くと簡単に終わってしまうのですが、実際ここに至るまでの手間は大変なものです。
ある製造過程を例に挙げてみます。
まず、三枚に下ろした鰹を煮るのですが、沸騰する寸前の94~96度を厳密に保って二時間~二時間半かけます。
次に骨抜きをしたら、薪(まき)で一時間余り燻(いぶ)して、三日休ませます。
それを十二回繰り返して、「荒節(あらぶし)」ができあがります。
ここに至るまで、約一ヶ月半かかっています。
次に、ようやくカビが登場します。
荒節の表面を削って余計な脂を落とし、形を整えたら、表面にカビをふきつけます。
カビは鰹の蛋白質をアミノ酸に分解し、水分を吸い出し、脂肪分を分解します。
カビが繁殖しやすい環境に二週間ほど置いたら、半日ほど天日干しして、表面を削ります。
これを繰り返して五番カビが終わる頃には、最初からおよそ半年が経過しています。
こうしてできあがったのが「本枯節(ほんかれぶし)」です。
これだけ時間と手間をかけてできる鰹節、これからは見直さなくちゃ~と思うでしょうが、少々お待ち下さい。
よく売られている「削り節」は、実は上記の「荒節」を削った物で、カビ付けを全くしていないものなのです。
本枯節からしてみれば、「手抜き」ともいえるシロモノなのでした。
最近では削り節のパック技術が高まったために、本枯節は贈答用か本格料理店以外では、ほとんど見なくなってきました。
では、「本物の鰹節」は自分で削るしかないのか、といえば、そうでもないようです。
普段見かける削り節は、裏の品質表示欄における名称が「かつお削りぶし」になっているはずです。
しかし、本物の枯節から作られる「削り節」は、「かつおぶし削りぶし」又は「かつおかれぶし削りぶし」になっているそうです。
後者二者は、少々呼び方が違いますが同じ物です。
昨年(2008年)の9月から、呼び名の規格が変わったので、現在でも二つが混在していることがある、というだけのことです。
JIS規格においては、二番カビ以上のものが、後者を名乗れるそうです。
今回、「市場調査」を行っていませんので、実際にこの近辺で「かつおかれぶし削り節」が手に入るかどうかわかりませんが、カスミジャスコで売っていなくても、学園のプルシエ(カスミ系・ララガーデンなど)に行けばある可能性が高いです。
何せ、「さいしこみしょうゆ」を売っていたくらいですから。
というわけで、ここしばらくかつぶしご飯を中心に食べていた私ですが、そういえば、口内炎には本当はどう対処するのがいいのでしょう?
わが家の医者に聞いてみました。
「普通は、口の中を清潔にしておく。
ビタミンを摂るといいという話もあるけど」
え?だって俺が口内炎って言ってかつぶし食っていたときも何も言わなかったじゃな……
え―――――――――――――――――――。
え―――――――――――――――――――。
学塾ヴィッセ―――――――――――――――――――ンブルク あさく
ら