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HOME雑記帳(あすなろ)あすなろ157 オナガグモ・ユカタヤマシログモ(過去記事)
2014.11号
「サイエンス・キッズ」という、学園都市を中心に、小中学生向けに行われている科学体験教室があります。
これを主催している芳賀和夫・元筑波大教授という人が、私の大学時代の恩師ということもあって、私も「キッズ」に登録させていただいております。
タテマエはキッズといいながら、実際には解説補助要員だったりすることも多いのですが。
つい先日は、そのテーマが「蜘蛛」でした。
大学構内でクモを捕って、実験室で観察しようという試みです。
実は私、ここ数年クモに興味がありまして、これは行かねばと8ヶ月ぶりに参加した次第であります。
そしてその朝の最初の会話
朝倉「どうもお久しぶりです」
芳賀「お久しぶりです」
朝倉「いや、ここんとこは土日も仕事を入れちゃって、中々来られませんで」
芳賀「……最近、何やってる?」
朝倉「2年くらいまえだったかにですね、ダンゴムシの結構いい本が出まして、ちょっと面白いなと思っているところです。
その辺の森にも、オカダンゴムシ以外のがいたりすることもあるらしいですね」
芳賀「へえ~」
「いやあ仕事が」→「何やってる?」→「ダンゴムシ」って、世間的にはまともな会話じゃないですよねコレ。
ともかくもその日は、クモに詳しい大学生が何人か呼ばれていましたので、私も色々と盛り上がって楽しんできました。
というのも普段は、クモの話がまともにできる相手って、周りにいないんですよね。
それはつまり、友達がいないという意味ですがキニシナイ。
そんなわけで、私はあまり詳しい人ではないことは承知の上ですが、クモのお話です。
しかしここで、有名どころのジョロウグモとかオニグモとかの話をしても面白くないので、もう少し違う、マイナーものの紹介という形にしてみます。
まずは、こんなクモから。
見えている長さは、1センチから5センチくらいです。
オナガグモというクモです。
見た目は、小さい松葉が糸についているようです。
このクモの巣は、糸が1本か2本しかありません。
しかもその糸は、触っても指にくっつかない糸ですので、虫はひっかかりません。
ではどうするのか。
実はオナガグモは、クモを食べるクモなのです。
巣を張るクモは、人生(?)の大半を糸の上で過ごすために、体のつくりも糸の上を歩くことに特化しています。
その結果、地面や草木の上を歩くより、糸をたどって歩く方が速いのです。
そういうわけですから、別の場所に移動中も、誰かの残していった糸があれば、それをたどって歩くことが多くあります。
クモのそんな習性を利用したのが、このオナガグモの巣なのです。
オナガグモは、この糸をたどってきたクモに糸を巻き付けて、捕らえて食べます。
なおこの習性は、高校生が発見したことでも有名です。
もう一つだけ、変なクモを紹介します。
ユカタヤマシログモという小さいクモです。
下の画像の畳の目から、だいたいの大きさがおわかりでしょうか。
巣を張らないで、歩いて獲物を捕らえるクモです。
巣を張らないクモ(徘徊性)といえば、よく見かけるのはハエトリグモでしょう。
他にも、野外にはカニグモの仲間やコモリグモ・ハシリグモなどがいますし、もっと南方では最強のゴキブリハンターであるアシダカグモなんてものもいます。
いろいろと挙げてみましたが、以上のクモ類は皆、非常に素早く走ります。
なんせ、ほかの虫を捕らえる方法がダッシュ一発なのですから、速くないと捕まえられません。
そのために、脚が太くて体ががっちりしています。
それに対してユカタヤマシログモは、ゆっくり歩くだけです。
弱々しいです。
しかしこのクモには、ほかのクモには絶対にまねのできない攻撃方法があります。
それは、口から糸(粘液)を吐くこと。
これによってまず相手を床に貼り付けてしまいます。
あとは、必要に応じて尻の先から出る「普通の糸」を巻き付けます。
そしてこのクモも、わざと他のクモの巣に触って、「エサがかかった!」と飛び出してきたクモを捕らえて食べる、なんてことをしています。
なお、口から糸を吐くことができるのは、クモ界広しといえどヤマシログモの仲間だけです。
また、このクモの体型は「頭でっかち」なのですが、これは糸の材料が頭胸部に詰まっているからなのでしょう。
今回挙げた二種は、共に我が家で見かけるクモです。
身の回りの事って、案外知らないものですね。
え? 知ってました?
そういう方は、是非お友達になってください。
今度ご一緒にお食事などいかがですか?
あと一つ、先日教えてもらった情報です。
最近はクモといえば、
「セアカゴケグモに注意」
という警告があちこちで見受けられます。
このクモは海外では毒グモとして知られていて、たまに人が死んでいます。
そんな危ないヤツが日本国内でも発見されたというからさあ大変、というのが1995年のこと。
現在は茨城県内でも発見されています。
たいへんだー。
ところが、ですね。
今のところ、国内では死亡例は確認されていません。
それどころかどうやら、日本にいるセアカゴケグモは、海外のものよりは毒性が少ないのではないか、ということです。
先日の大学生によれば、
「あんまり神経質にならなくても大丈夫ですよー。
それよりも、カバキコマチグモの方が痛いです」
だそうで。
触る人はあまりいないでしょうが、一応ご注意を。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義