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2015.03号
新年明けましてしばらく経ちますが、頭の中が中々切り替わりません。
昨年は10月頃まで今年は何年だっけと迷うことがありましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
ひつじ年です。
一般にヒツジといえば、羊毛を取るための「綿羊」のことを想像されるかと思われます。
私も同様です。
しかしこれは、完全な家畜として品種改良されたものです。
ブタやウシと同じですね。
漢字では、美・義・翔・善など、「羊」を部首として使ったものが数多くあります。
このことからも、中国には古代からヒツジがいたことがよくわかります。
さらに、漢字の由来を調べていきますと、ヒツジは神への捧げ物として使われていたようです。
もしかしたら、漢字が作られた頃にはすでに、家畜として飼育されていたかもしれません。
そんなヒツジですから、野生のヒツジなんてものは野生のヒトコブラクダみたいに、既にいないものかと思っていたのですが、ちゃんと現存するのですね。
ヒツジの原種、つまり野生種は、こんなんだと言われています。
上がムフロン、下がアルガリという種類です。
あれ?
君たち、なんだか超かっこよくないですか?
毛も普通にストレートヘアですし、角もでっかいし。
ちなみにこちらが普通の家畜ヒツジ。
上がメリノ種、下がサフォーク種です。
ああこれこれ。
ヒツジと言ったらこれですよ。
野生のヒツジからは、ずいぶんと変わったものですね。
ヒツジが家畜として飼育された痕跡は、古代メソポタミアの紀元前7000~6000年頃の遺跡が、最古のものとされています。
つまり、人類がヒツジを家畜にしてから、少なくとも8000年から9000年経っているということになります。
すごいですね。
ウシも、ヒツジ同様に漢字で部首になっていますが、こちらの家畜化は紀元前6000~5000年頃ということですので、ヒツジよりも1000年ほど新しいようです。
これは、ウシの原種がヒツジよりも大きく凶暴で、飼い馴らすまでには手間がかかったから、と考えられています。
なお、ヤギは、人類の家畜としてはヒツジよりももう少し古い歴史があるということです。
しかし漢字で書くとヤギは「山羊」、つまり、まずヒツジありきの命名ですので、アジアでは、家畜化されたのはヒツジが先だったのかもしれません。
あと、今では家畜と言っていいのかどうかわかりませんが、ネコもなかなか古くから、人類にとって身近な存在でした。
こちらは9500年前の遺跡において、人間と共に埋葬された跡が発掘されています。
こちらは、農耕を始めた人類が、貯蔵した穀物をネズミの被害から守るために、村に入ってきたネコを保護し始めたことがきっかけのようです。
しかし、なんと言っても人間と付き合いが長いのは、やはりイヌです。
イヌの原種はオオカミと言われています。
元々は、人間の食べ残しを拾うためになんとなく近づいてきたオオカミが、そのうちに一緒に暮らすようになったのがイヌだ、なんて言われています。
ただ、オオカミの一部がイヌという家畜になったのか、それともオオカミとは別のイヌという動物が全て家畜化されたのか、そのあたりはよくわかっていません。
1万2000年前の遺跡では、子犬に手をかけた姿で埋葬された女性が見つかっています。
つまり少なくともこの頃には、イエイヌという種類の動物が、人間と密着した生活をしていたことがわかっています。
さらに遡る、3万年以上前の遺跡でイヌと思われる骨が発見された例もあります。
最近流行の遺伝子解析では
「イヌのDNAの塩基配列に見られる変異が、1匹のオオカミのみに由来する場合(単系統)は、イヌの家畜化は約4万年前」
「複数のオオカミがイヌの系統に関わっている場合(他系統)は、約1万5000年前」
という報告もありますので、もしかしたらもっと古いのかもしれせん。
また、イヌの登場と同じ頃、人類の狩猟道具が石斧からヤジリに変化しているところから、
「人類は、イヌとの出会いによって狩猟方法が変わったのかもしれない」
という説まであるようです。
ところで、先にも少し書いたとおり、ウシやヒツジなどは、最初は凶暴な野生動物を無理に囲っていたはずなのですが、今ではすっかりおとなしい動物です。
イヌとオオカミも、随分と性格が違います。
そこで、オオカミはどうやってイヌとなっていたのか、そのプロセスを見つけようという研究が、ロシアでもう50年以上も続けられています。
研究では、素材にギンギツネが選ばれました。
キツネはイヌに比較的近いことと、家畜化されていないことが理由です。
まず、毛皮用に飼育されていたキツネの中から、おとなしそうな個体130頭を買ってきて交配します。
そして、その子供の中から、比較的おとなしそうな個体を集めて交配、という繰り返しをしていきます。
言葉で書くと簡単ですが、キツネが成獣になるまで1年かかりますので、非常に気の長い実験です。
すると、4世代目に、人間を見てしっぽを振るキツネが現れました。
9世代目の頃には、耳が垂れた子ギツネが誕生して、まだら模様のキツネも現れてきました。
そしてこの頃は、人間に対して甘えてクンクン鳴くようになっていました。
さらに何世代かあとでは、ひもを付けずに散歩しても、呼べば戻ってくるような個体まで現れました。
50世代目になると、85%の個体が人間に「甘噛み」をするようになりました。
つまり、「イヌ化」してきたわけです。
逆の実験も行っています。
人間に対して攻撃的な個体ばかりを交配していったらどうなるか。
その結果登場した攻撃的なキツネは、子供の頃から人に馴れたメスに育てられても、やはり人間に攻撃的に育つそうです。
ここから、行動を左右するのは、遺伝子の力が大きいのではないかと見られています。
それはそうと、我が家の庭に、まれにタヌキが現れます。
その度に、ああタヌキを飼い馴らしてみたいなあと思うわけです。
ということはつまり、まず130頭集めて……。
うん、無理っぽいですね。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義